マサヒロさんってどんなひと?
東京芸術大学を卒業後、チェルニー=ステファンスカ女史に才能を認められてポーランドに留学。18歳のときには第46回日本音楽コンクールで優勝し、NHK交響楽団との共演でデビューを飾る。男性的でエネルギッシュかつ華麗な技巧を聴かせるそのピアノは、学生時代から「芸大のホロヴィッツ」と呼ばれ絶大なる人気を博し、数多の女性達を失神させたという。演奏で女性を失神させるにはかなり高度なテクニックが必要とされるが、斎藤雅広はそのワザを身に付けた数少ないアーティストの一人。ショパンやリスト、ラフマニノフといった作曲家の曲を得意とするが、彼にアダルトな色気を表現させたり、雨・雷・嵐・波など天変地異を表現させたら、右にでるものはまずいない。それは斎藤雅広と共演した来日アーティスト達が揃って「彼よりうまいピアニストはいない」と断言して帰ったことでも証明されている。
そんなスゴイやつが、なんとNHK教育テレビの子供番組に、黄色いメガネに紫の和服、鍵盤の袈裟に五線譜の帯、アタマには青と黄色のメッシュまでいれて、「キーボーズ」というキャラで超ハイテンションに登場してしまった。おかげで今となっては泣く子も笑うトップピアニストの存在に。
さて女心はとっくに捉えている彼が、子供の次にターゲットとして選んだのが「オヤジ」・・・NHK教育テレビ「趣味悠々〜お父さんのためのピアノ講座」の講師として、楽しい話術に絡めてプロの技を惜しげもなく披露したのはまだ記憶にあたらしい。そんなワケで日本で最も幅広い年齢層のファンを味方につけたピアニスト「マサヒロ」は、この冬もクラシックとポピュラーのオシャレでアダルトなCDをリリースしたり、キーボーズが冒険をするというゲーム感覚の子供向けインターネット番組に声優として登場!!・・・ますます目が離せない存在だ!!
クラシック音楽ってそんなに固いの?とか、クラシックだって楽しめるなんて事を看板にかかげる人が多いけど、ぼくは好かないなあ。クラシックはクラシックだからの良さがあるわけで、それを妙にわかりやすくやろうとしすぎるのは、100%オレンジジュースを水でうすめる様なものですよ。でも多少難解なところがあっても完全にエンタテインメントでなければならない……というのが持論です。そんな私がこれから初めてクラシックを聴こうという方におススメしようという曲は、ちと変わっているかもネ。例えばピアノといえばショパン。初心者が名曲として最初に出会うのは、小犬のワルツだったり幻想即興曲や夜想曲の第2番だったりするわけだけど、夜想曲の遺作、嬰ハ短調なんかの方がいい。あと前奏曲の第17曲。……単独での検索は難しいので、なんらかの偶然で耳にして……それからクラシックのファンに……という方も多いのでは。
ショパンで最初におすすめは「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」。この曲は最初の叙情的部分が、ちょっとまどろっこしいという向きもあるが、山あり谷ありのステキな曲。若いピアニストは豪快にまたは極めて軽やかに演奏して、この曲の華やかさをあおる。ぼくのお気に入りは、サンソン・フランソワ(P)のもの。2種類あり1つはオーケストラ伴奏となっている。正当なショパン演奏というものではなく、個性的な部類の演奏なので好ききらいはあるけど、とにかく粋なのだ。本来はアルトゥール・ルービンシュタイン(P)の60年代ごろのステレオ録音がベスト。こちらはしっとりと叙情的な感じが前面にでていて本当にすばらしい。とはいえ好みによっては、覇気のない演奏扱いをされてしまうかもしれない。ここで一句……、
ほんとうに 偉大なものは 個性的 (マサヒロこころの俳句)
ぼく自身最初に聴いたピアノ曲というのは、シューマンの「アベッグ変奏曲」だったと思う。もちろん通俗的な小品は幾つも聴いていたけど、ちゃんと自分で意識して買ったのはこれが最初。当時デビュー間もない大型新人だったクリストフ・エッシェンバッハ(P)を是非聴くようにと先生に言われ、買ったシューマン・アルバムの中で発見した1曲。これはシューマンの作品1ということもあり、才能が溢れるばかりのキラキラ感でいっぱい。もともとアベッグとは主題がラシミソソという風に動くので、これをドイツ読みするとABEGGという音列、ここから命名された。決して街を行き交う恋人達(アベッグ)の曲ではないのだぁ。演奏はこのエッシェンバッハは、ちょっと音質が固いが、今聴いてもなかなか良い……逆に巨匠ではあるがリヒテル(P)の演奏では色気がなくて満足できない。すっかりこれでシューマン好きなったマサヒロ少年は、次にルービンシュタインの弾くシューマンの「謝肉祭」に出会う。曲は謝肉祭の1日の描写で、華やかでステキな内容……そこにまた様々な人間が登場しての人間模様もある。実はこの演奏、非常にわかりやすくロマンティックな演奏なのだが、本来のシューマンらしさというものが欠けている演奏だった。しかしその説得力に完全に魅せられてしまったので、その後しばらくこの曲は誰のを聴いてもなかなかピンとこない病になってしまったのだが、それはそれでよいではないか。しかしバレンボイム(P)やラローチャ(P)のいかにも標準的な演奏も、実は簡単にはできないものなのだが……。個性的といえば、これもやはりフランソワ(P)だ。この演奏はフランソワの演奏の中でもベスト3にはいるものだが、日本では早々に廃盤になっている。なぜ? それでは一句……
はじめての 出会いは大事よ でもいいさ (マサヒロこころの俳句)
映画「シャイン」ですっかり有名ラフマニノフの「第3番ピアノ協奏曲」。とはいえ、やっぱり第2番……これは誰が聴いてもロマンティックで……おすすめ。最近はこの曲の聴きうる全演奏についての本もでたので、ここでは敢えてしつこくふれないけれど。幻の名演を1つ……ジョルジ・シフラ(P)、シッパース指揮のライヴ……これはすばらしい。いわゆる映画音楽や派手派手ロマンティック協奏曲風にこの曲をとらえている人から専門家まで満足させられる。実はこのテイク、レギュラー盤ではでていなくて、JRの駅売りのディスカウントCDにあるから驚き……・もしかしてニセもの……斎藤雅広のだったりして。ここで一句……
こうなれば 誰でもいいよ うまいから (マサヒロこころの俳句)
さて斎藤雅広といえば12月21日ワインを片手に大人が楽しむ癒し系CDをリリースします。これで初めてクラシックに接してもOK。今、全国で他にない楽しいコンサートも展開中です。ぜひ遊びにいらしてくださいね!!! ではまた次回……
●ピアノ室内楽オススメ曲
前回に続いてみなさまをクラシックの世界にナビゲーション!!! ぼくはピアニストだからどうしても導入はピアノ曲になってしまった。当然だけどね……でもモーツァルトのソナタなんかにならなかっただけでも上出来かな? モーツァルトは真の天才だとか、その楽しそうな音楽にはホントは深い悲しみが満ちているなんて言われると、専門家でもゾゾゾっとしてしまうのです。もっと感覚的にとらえてもいいじゃない! 悲しみと喜びが交錯する曲といえば「ピアノ四重奏曲第1番K.478」……これは最初から感情が爆発する……そしてうごめいて飛翔していく……第3楽章なんかはモーツァルトならではの軽やかな主題が踊りだすけど、うわっついていない。心がこもって上品だけど熱い……わかりやすいけど内容があるっていうのがいいね。ピアノで選ぶとイングリット・ヘヴラー(P)のあたりがスタンダード、でも大昔のアルトゥール・シュナーベル(P)の演奏が第2楽章は遅いけど何かいいんだよなあ。そ、室内楽って特に地味で敬遠されがちだけど、クラシックって感じ……そもそも王宮や貴族のサロンなんかがルーツだしね。どんどん聴いてみようよ。ドヴォルザークの「ピアノ五重奏曲」とかフォーレの「ピアノ四重奏曲」も良い曲なんだ。もう聴いてくれたかな? で、一句
わかりにくい 曲と思うな 地味な曲 (マサヒロこころの俳句)
●超絶技巧!を楽しむ
ところで皆さんはピアノ弾いたことありますか? 大概みんなバッハのインベンションあたりで挫折するんだよね。たしかにアレは大変だ……といって急にショパンができるかって言ったってねえ。「そうだ、それならポップスならば……スタンダードもいい……でも結局、何か実にならず自滅……」ってパターンになりがち。そんなコンプレックスから妙に、波打つ高音、いかにも指が速く動いてそうな曲に人気が集まる……それがリストの「ラ・カンパネラ」だ。鐘のイメージだから高音だらけ……フジ子(イングリット・フジ子)さんのピアノでも映画「シャイン」でも、そしてその昔、赤いシリーズでも登場……かく言うわたくしもキーボーズの番組で弾いてました。技巧派のピアニストだもんねのリストの曲はどれも凄いのですが、有名な「ハンガリア狂詩曲第2番」も非常に弾きにくいし、そういえば「愛の夢第3番」も、現在巨匠と呼ばれている人たちはあまり弾かない……というワケで生で良い演奏にはなかなか出会えない。良い曲といえば演奏会用練習曲ため息もメロディが泣けるが、やっぱ超絶技巧をあやつる曲は演奏次第で楽しみが倍増するのです。LDで出ているジョルジ・シフラ(P)の弾く「半音階的大ギャロップ」や「ハンガリア狂詩曲第6番」なんて、呆れるくらいスゴイくて、なぜか笑いがこみあげてくる。またウラディミール・ホロヴィッツ(P)が手を加えて弾いている「ハンガリア狂詩曲」「ラコッツィ行進曲」は、ピアノってこんな楽器だったんだと目からウロコうけあいの物凄さ。そしてそのホロヴィッツがテレビに出演した時のライヴ……全部楽しめるが、中でもスクリャービン(ロシア近代の作曲家)の練習曲が、ポピュラーな曲を越えてイカシてる。じゃ一句
これでもか ガンガンやったら 人気もの (マサヒロこころの俳句)
●楽器の響きを楽しむ
ピアノという楽器の響きの良さ、メロディの素敵さを考えるとドビュッシーの「月の光」や「アラベスク」もおススメ。昔のヴァルター・ギーゼキング(P)のスケール大きなロマンティックな演奏も良いけど、もっと色気のある、サウンドも良いもので聴きたい。「アラベスク」はサンソン・フランソワ(P)が非常に個性的。「月の光」はもし美音のアルトゥーロ・ベネデッティ=ミケランジェリ(P)が弾いていたら、入手したいものだ。この2曲は誰もが弾いているから、聴くのはカンタン。デンオンはじめJクラシックの美男美女のビジュアル系の演奏家には、欠かせぬレパートリー。だから当然私のCD「マイ・ロマンス」の中にも入っているのだ。だめぇ〜?
またしても やってしまった 自己宣伝 (マサヒロこころの俳句)
次回はオペラの事なんかを……じゃあ、また!!
●「ありのまま」はむずかしい
あけましておめでとうございます。いよいよの21世紀、こんなめでたい時に@ぴあに登場できて、うれしい限り〜。さてさてマサヒロのクラシックのナビですが、実は私、年末の紅白……見てしまいました。そこに登場したビッグヒット「孫」(ご存じですよね)……これを見て感じてしまったのだ……どーして孫が生まれた喜びとか、じいちゃんのめいっぱいの幸せをこんなに悲しげなメロディーにのせて歌わなければならないのだろうか?ってね。これはヨーロッパ音楽では考えられない。幸せな気持ちは幸せな音楽で、悲しい気持ちは悲しい音楽で表現され、その微妙な色合いの移りを明確に、めくるめく表現できてこそ巨匠なんだから。ちょうどその後教育テレビでレナード・バーンスタインが弾くモーツァルトのピアノ協奏曲をやっていたけど、これがまさにそういう演奏……音楽がふつふつと涌きでてくる様だった。「孫」は日本人が泣ける旋律線と歌詞のツボを利用した一点で表現される音楽で、そこに音楽と気持ちの変化と移行は少ない……これが悪いというのでなく、これが日本人的な表現というものなのだろう。例えばこれを孫の誕生と喜びを託した幸せに満ちた音楽にもし置き換えたら(ちょうどシューベルトなんかの天上的な歌曲みたいになるね)、きっとヒットもしないし、この人もうまくは歌えないだろう……というか誰でもうまく歌うの難しいよ。何事もありのまま、というのは勇気がいるのだ。で
ありのまま 心のままには むずかしい (マサヒロこころの俳句)
●やっぱりオペラはブランドで
良い悪いではなく、こうした日本人的な感覚はクラシックの表現では大いに邪魔になってくる。そのバーンスタインを見つつ、民放でのクラシック番組を見た時の歴然たる差、特にオペラの様にストレートに感情とドラマの表現があるものは尚更そうだ。ボクはウィーンフィルの人達とよく共演するけど、彼らより上手かもしれない日本人を何人か知っているし、ピアノでも同じだ。そんな器楽に対して歌は、一流の外国人歌手だったら例外なしに日本人よりうまい。これは体格の差ではなく表現の方法論と感覚の差だ。だからなかなか日本人のオペラは見に行かないんだ。そしてつまらないオペラやオペラコンサートを見せられた時の空しさほど、イヤイヤって感じなものはないねえ。
仕方ない オペラだけは ブランドで (マサヒロこころの俳句)
●オススメのオペラ
まず最初に聴いていいのはプッチーニの「ラ・ボエーム」だなあ。旋律もいいしストーリも泣けるんだあ。いいよぉ……。プッチーニでは「椿姫」や「蝶々夫人(マダム・バタフライ)」も有名だけどボエームの方ををおすすめします。スタンダードなのはカラヤン指揮(パヴァロッティとかが歌っている)のものとセラフィン指揮(テバルディが歌っている)ものあたり。面白いのはビゼーの「カルメン」でしょうか……有名な曲のオンパレードだしね……でもボクはヴェルディの「リゴレット」が好きかなあ。実際に歌うと意外に大変だという「女心の歌」が出てくるオペラ……これは珍しく主役がバリトン(男性の低めの声)なんだ。あと全くマイナーですけどフランスのラヴェルが作曲した「子供と魔法」……す、す、すてきだああ。特に良い演出のビデオで見たいメルヘンファンタジー!といえる作品。
良い声で がーと延ばせば 夢ごこち (マサヒロこころの俳句)
今日は新年早々ウンチクを語っちまいました。でも奥行きが深いのが楽しいクラシック、まずわかりやすい曲……とはいかずに、まずはいい曲を聴きましょう!
そうそう、ボクの「マイ・ロマンス」、もう聴いてくれたかなあ。ポピュラーなものを交えて、これこそ良い曲のデパート! そしてボクの1番好きな曲のフォーレアルバムにもチャレンジしてね。じゃ。
●室内楽ってけっこうハマる
みなさーん、マジ寒いっす。お元気ですかぁ?この何回かでクラシックが、やっぱホント面倒なジャンルながらも良さがある旨、お話しました。そんな中でも特に地味でわかりにくいのが室内楽と歌曲のジャンル……室内楽についてはじっくり聴けば、味わいと攻めあいの応酬の、ジャズのセッションみたいな所があるので、慣れると結構はまる。ハイドンやモーツァルトの弦楽四重奏曲は、本来はそうした扱いをしてほしくはないけど、朝の目覚めから朝食のBGMには最高。そうした弦楽四重奏でおすすめはラヴェルの弦楽四重奏曲。特に第1楽章は美しいんだ……日本人好みだ……実はサスペンス劇場やメロドラマでこれに似た感じの音楽がつけられていることがある。いけないなあ、盗作は! 室内楽はマイナーな世界だから盗用の宝庫なのかもね。
貸し借りを そっとしちゃうの いいメロディ (マサヒロ心の俳句)
マサヒロ心の……っていうのもどこかで聴いた様な??? ま、いいか。演奏はイザイ弦楽四重奏団はじめフランスの人達……確かに本場ものはいいんだけどちょっと淡泊なのよね〜……もっとロマンティックなアルバン・ベルク弦楽四重奏団のがおススメ。
●失恋のドイツ歌曲
ところで、歌曲……といえばシューベルト。学校で聴かされたよなあ「魔王」とか。そういった単品はいくつもあって、それぞれのキャラで好きキライもわかれるし、結構わかりやすいかわいい曲も多い。でも連作による歌曲集……これは初心者は通常よけて通るものだ。シューベルトには「3大歌曲集」というのがあって、特に有名なのは「冬の旅」……これは暗い。というか失恋してここまで情けなくボロボロになるか、君は?という曲。1時間近くその顛末を聴かされるワケで、確かに専門家的に難曲だし、やり甲斐もあり、好きな人も多いのだけど……。同じく失恋して自殺までしちゃう「水車小屋の娘」は「冬の旅」に比べるとぐっと聴きやすい……シューベルトの音楽の魅力が溢れていてオススメ。特にテノールの柔らかな声にのせて青春の傷付きやすい心が歌われれば、説得力もあろう。最近のペーター・シュライヤー(T)、良かったなあ。ハンス・ペーター・ブロホヴィッツ(T)やフランシスコ・アライサ(T)もすてき。実は彼らとは共演したこともあり、ボクとしては本当に幸せな時間でした。もう1つは「白鳥の歌」、これはシューベルトの遺作を寄せ集めたもので、作曲者の意志でまとめられたものじゃない。でも有名な「セレナーデ」はこの中の曲だ。歌曲集ではボクはシューマンの方が好きかも。ロマンティックだし。例えば「詩人の恋」……失恋を歌ってもこのぐらいがいいなあ……これはまたピアニストの腕次第の曲だし、ハイネの詩と曲がマッチしていてステキ……オススメにしよう。あと地味だけど「リーダークライス」作品39の1曲めと2曲め……下手なラヴソングだったらボクはこっちだな。また「ミルテの花」の中にも良い曲がある。大体シューマンはピアノ曲でも組曲の作曲がうまいから「一時が万事」という所か。
歌曲集 歌う人は なお大変 (マサヒロ心の俳句)
●フランス歌曲ってステキ
今までのはドイツ歌曲(リート)のジャンルだったんだけど、何てったって、フランス歌曲〜ぅ!!! これだあ!! いやあー、好きです、好きなんです。こんなすてきな世界そうはないぜよ。特にドビュッシーの若い頃の歌曲の数々……18歳の彼は30代の人妻のヴァニエ夫人のために、せっせとロマンティックな歌曲を書き綴る……これがとても青年の作とは思えぬ怪しげな美しさ……すばらしいんだ。アップショー(S)の歌う『忘れられた歌』というCDや私が伴奏したCD、足立さつきフランス歌曲集でも聴ける。フォーレの歌曲はさらに独特な世界……有名な「夢のあとに」なんてまだまだ、実は禁断の名曲がいっぱい〜。ここでぜひ皆さんにご紹介したい歌手がいます。バリトンのピエール・ベルナック。表情そして解釈、すてきさ、うまさにおいて、ちょっといないぞ、こんな人。この人こそはクラシック音楽の最高の演奏家です。カラヤンだのフルトヴェングラーだの歴史的に語りつがれる人々の陰で、こんなに物凄い人があまり知られていないなんて理不尽じゃ。これも批評家の間抜けな罪の1つなんだろうけど、ほんと冗談じゃすまないよー。でも彼を知る演奏家が増えたら、みんなうまくなってボクが困る?? いえいえ、クラシック界が活性化することこそ、ボクの願い……機会があったらベルナックを聴いてね。
人間の 情念きくなら フランス歌曲 (マサヒロ心の俳句)
どうですか……けっこう皆さんの知らない世界が拡がってきたでしょう。色々な面を持ち合わせるクラシック音楽……勉強や研究するつもりで聴いたらつまらないけど、ただ聞き流すのももったいないって所かな。じっくり聴きすすんでみませんかあ。時の流れが豊かな感じになりまっせ。じゃ。
●オーケストラといえば指揮者
いやあ、早かったなあ。いよいよマサヒロの連載も最終回を迎えました。短い間でしたがおつきあいしていただき本当にありがとうございました。さてさて今までクラシックのナビを、評論家の本とはちがった形でやってきましたが、やっぱりここでオーケストラの曲をとりあげない訳にはいかないでしょねえ。そもそも指揮者……かっこいいと思っている人多いですね? 確かにいかにも人の上に立つ職業って感じだし……でも基本的には他人まかせ、オーケストラがちゃんとやってくれなければ、どーしよーもないあわれな職種でもあるんです。だから卑屈な感じの人ってけっこう多いんだ。逆に大指揮者となればカリスマ的なチカラで存在感からして圧倒的なんだけど、どーやってそこまでになったかを考えると、政治力、財力、人間関係……一番うさん臭い音楽家かもしれないね。
●オーケストラの初体験は?
オーケストラの曲で最初に聴きがちなのは、交響曲だとベートーヴェンの「運命」や「田園」、管弦楽曲だとチャイコフスキーのバレエ曲やラヴェルの「ボレロ」あたりでしょうか。運命っていえばジャジャジャジャーンて、だれでも頭の部分は知ってるわけだけど、結構最後の解放的な祝福に向かって山あり谷あり叙事詩のごとくの大曲で、ボクなんか最初にこの曲を聴いたのは小学生だったからヘビーだった・・・「田園」だって美しい曲だけど現代人の感覚からいくと自然描写もアカぬけていないし、ヨーロッパ的な風景とかノスタルジーと無縁な初心者には長かったりする。
運命を うんメェ〜具合に 聴けなくて (マサヒロ心の俳句)
●交響曲、ハマッたらとまらない!
で、ベートーヴェンの「第九」だってね、すごい曲なんだよ。人間の煩悩の数々が打ち消され浄化されて、有名なあの主題が導かれて合唱エンヤカヤカヤ。ホントは何回も聴いても難解な曲じゃ……。ボクが子供のころ聴いてワクワクしたのはドヴォルザークの「新世界」……それも第四楽章。「新世界」といえば下校のBGMでおなじみの第ニ楽章、「家路」とかネーミングされてるアレ。だけど、僕がハマッたのは第四楽章だったんだ。スピード感とスペクタクルそしてロマン……全部ある。「新世界」はチャイコフスキーの「悲愴」とともにおすすめの交響曲。交響曲はハマりだすと止まらない……マーラーやブルックナーの大交響曲にすぐに行ってしまう。また有名なショスタコーヴィッチの「交響曲第五番」なんていうのも、吹奏楽でもやられるから耳なじむ。有名なのにはシューベルトの「未完成」があったな。美しいけどやはり気持ちもどこか収まっていかない感じ……こういうのを癒しで聴く人もいっぱいいるのだろうけど、シューベルトはいつも自分の主題を慈しみすぎて、大曲はしつこいんだよね。それがいいところでもあるんだけど。
未完成 完成しなくて 良かったね (マサヒロ心の俳句)
●大作もいいけど小品もね
オーケストラの小品はすてきなものも一杯あるけど、好きだったのはチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」。これはおすすめ。第一楽章なんかいかにもクラシックらしい雰囲気が映画音楽の様に再現される。第ニ楽章のワルツも良いし第四楽章の導入がいい。管楽器がいないけどロマンティックが止まらない。
そして宗教曲、死者のためのレクイエム……なんていうと、いかにも重苦しい難渋な感じがするけれど、モーツァルトのものは絶筆でもあるし、すばらしい感動を呼ぶ。フォーレの「レクイエム」の美しさは、ホントに例えようがないっていう感じだね。ぜひ聴いてみてください。
●これからは違うぞ!
さてさて、こうして突然ナビコーナーを作ってしまったのだけど、概してナビがなければトッつきにくいというイメージがあるのが問題だと思うんだ。ホントはすてきで、多少難解であってもそれなりのインパクトを、他のジャンル以上にあたえられる世界なのに残念でなりましぇーん。コンサートに行っても結局つまらなかったって帰る人が多いってことだよね〜。今までは。そう、今までは。
ワッハハハハハハハハハハハ!!! これからはちがうのじゃ。ぜひぜひ斎藤雅広のコンサートを覗きにきんしゃい。楽しさ満載! 帰りにはもうCDを買わずにはいられないのだー。(CDは、ニの線でマジメだが……)ってまあ、自分でいっちゃオシマイじゃが、今回でおしまいですからエーではないか。いや、真剣に……これからも良いコンサートができるように頑張ります。どーぞ応援の方、よ・ろ・し・く
もう一つ この際だから 自己宣伝 (マサヒロ心の俳句)
私に会いたくなったらオフィシャルHPへ……
あ、そうそう今ヤマハのHPでも大暴れしてまーす。
それでは!
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