NHK教育テレビ 「トゥトゥアンサンブル」

ローランドの会報誌「RET'S」に掲載されたコラム
(但し初稿のため、実際に掲載された文章と若干異なります)


RET'S PRESS 誌面より


【1】RET'S Pressセミナー 第1回

そのテクニックと即興演奏の才能で、“芸大のホロヴィッツ”と畏怖された斎藤雅広さん。情熱的なクラシックの演奏活動を長年続けてきた斎藤さんは、そのパワフル、かつ華麗な演奏と特異なキャラクターで、クラシックファンのみならず、幼児から大人まで幅広いファンから圧倒的な支持を得ている。そんな斎藤さんが来月より本誌のアレンジ講座を担当するということで、まずはご挨拶がわりにレッスンに色々と役立つ深〜いお話を聞いてみた。

いろんな生徒さんがいるように、いろんな先生がいることが大事です

***斎藤さんが初めてピアノに触れられたのはいつですか?

斎藤:ボクは父親がオペラ歌手だったんで、どうしてもピアノをやりたいと思って4歳から始めました。最初はハチャメチャにやってましたね。6歳の時に、NHKの「ピアノのおけいこ」って番組に出るようになったんですが、なにしろ先生がおっかなかったのを今でも覚えています。でもそうやって怖くしていただいたのが、良かったんでしょうけど。

***それはどういった意味でですか?

斎藤:例えば、ウィーンフィルの人たちと室内楽をやる時とか、結論を言えば楽しく良い音楽が出来ればいいんですけど、伝統音楽である以上ルールもある。もともと好きで始めた音楽ですし、自分に足かせを履かせるために始めたわけでもないけど、伝統というものは徹底的に叩き込まないと自分のものにはなりません。

***今は逆に教える立場になられていますよね。

斎藤:NHKの「お父さんのためのピアノ講座」をやらせていただいてから、アマチュアの方にアドバイスするようになったんです。HPでもいろんなアマチュアの方と交流も盛んになってきましたね。実際に、音楽大学とかでもレッスンしていますが、定期的にスケジュールが取れないので、ホームレッスンのスタイルで自由にやらせても
らっています。だから時間は無茶苦茶です(笑)。「その時間に来れるものなら、来てみな」みたいな(笑)。

***どういうスタンスで斎藤さんは教えられているんですか?

斎藤:ボクは、好きでやりたいって人には、本人の描きたいものを尊重するっていうスタンスです。それが一番大切だと思いますね。本人にやる気がなかったら絶対にうまくはならないし。ちょっと横暴に聞こえるかも知れませんけど。

***最近、大人になってからピアノを始められる方が増えてきていますが?

斎藤:大人になって始められるという方には大きく分けて2通りあると思います。“基礎からキチンとやるのが好きな人”もいれば、“最初からショパンが弾きた”という人もいますよね。その善し悪しは一概には言えないですが、いろんな生徒さんがいるように、いろんな先生がいることが大事でしょうね。ボクが先生だったら、最初からお洒落な曲を「時間をかけてやりましょう」って言いますね。絶対すぐにはできないから(笑)。あと、大人のレッスンの場合、一人の人間としてのお付き合いというか、お友達になることが大事なんじゃないですか。子供と違って、きちんと人格がもう出来ているわけだから、頭ごなしに言っても反発心を持たれるだろうし。

***でも実際に初心者の方でもショパンが弾けるようになるものですか?

斎藤:弾けますよ、絶対。早くパラパラっとは弾けないでしょうけど。絶対弾けるようになります!基礎的なことからやると、これがなかなか上手くならないんですよ。楽しくないから。なんでもそうですが、楽しくやってる方が、早く出来るようになりますね。子供にはまず本物の音を体験させてあげることが大切です。

***HPでは「大胆な演奏は、大胆な私生活から」とおっしゃっているのが印象的ですが(笑)。

斎藤:そうなんですよ! ものすごく大胆に演奏したければ、普段からそういう人でなければ、躊躇しちゃうんです。逆に几帳面な演奏をしたければ、普段から几帳面な私生活をしていなければ無理ですね。つまり、自分はどういう演奏をしたいかっていうことを考えて、生活スタイルをそのように決めた方がストレスが無いよっていう意味なんです。それが逆になると、ストレスが多くなって、壁にぶつかると壊れちゃうんです。だからお弟子さんには「普段の生活スタイルが演奏スタイルと同じだと苦労しないよ」っていつも言ってるんです。

***斎藤さんはお子さんのファンも多いようですね?

斎藤:子供番組を2年間やっていましたから、その影響でしょうね。番組では、一流のものを子供逹に聴かせたかったので、ゲストは中村紘子さんや佐藤しのぶさんといったトップの演奏家に来てもらって、アンサンブルをするスタイルでやりました。子供っていうのは、美味しい、マズいがわかりますからね。音楽をわかって聴いていなくても、直感的に子供なりに良し悪しを感じ取るんです。

***その子供が多いようなコンサートでは、どんな曲目でおやりになるのですか?

斎藤:選曲に妥協はないですね。衣装の早変わりとか、やり方が変わるだけです。だからわざと「わ〜」っと大きな声を出して、演奏になったらいきなりバラバラって弾いて、そのギャップがスゴくて驚かせているようです。ビックリしながらも真剣に聴いてますね。今までのコンサートって、わりと「ベートーベンはこれだ〜!」って説明しておきながら、いつも「エリーゼのために」を弾いたり、説明は難しいのに、いざ聴くと薄くて意味が無かったりとか。だからボクは説明はあんまりしないで、「ベートーベンは変なおっじさんです〜!! おっかしな人〜!」とか言って、いきなり本格的なベートーベンの曲を弾くと、“こんなにおかしな人がこんな曲を書くのか〜”って驚く。好きになってもらうより、まず本物の音を体験させてあげることが大切ですよね。

***最近の演奏会なんかで何か感じられるようなことはありますか?

斎藤:本当はコンサートは、大人がお洒落な気分で聴きに来てくださるのがボクの理想です。彼女をロマンティックな気持ちにさせて、「今日こそ彼女を落としたい!」みたいな(笑)。そうすると、こちらも思いっきりロマンティックな演奏ができたり。八百屋のおじさんが最近どうも疲れるから、モーツァルトでも聴いて落ち着いた気
分になりたい!って来てくれるような(笑)。だから今は、いろんなスタイルのコンサートをやって観客の幅を広げていこうとしています。ボクの次の次の世代あたりで、そういう理想のコンサートの形が出来てくるんじゃないですかね。


クラシックピアニスト斎藤雅広、として本格的な初のアルバム

***ところで、12月にCDが発売されますが?

斎藤:2002年はデビュー25周年で、リサイタルもありましたので、記念のCDということで作りました。わりと今まではコンセプトのはっきりしたアルバムが多かったのですが、今回はクラシックピアニスト斎藤雅広、として本格的な初のアルバムです。ホロヴィッツへのオマージュという副題を付けていますが、これは単にホロヴィッツに挑戦するという意味ではなく、子供の頃からホロヴィッツに憧れて、「あんな人になるんだ!」ってクレイジーな気持でやってて、年と共に自分の力量を知って、でも落ち込むどころか、さらにその良さが分かって、ますます興奮する日々を送っているんです。例えば、今の人逹は、トップに立っているのがキーシンに代表されるような完成度が高い人逹だから、自分の実力を知ってしまうと、評価を恐れてしまって、イガイガした個性の強さを余計に失ってしまうような気がするんです。若いうちしか思い切ったことは出来ませんから「そういう気持ちを持とうよ!」っというボクの気持ちを込めた、副題なんです。だから、今回は思いっきり大暴れしています。

***このアルバムの選曲と演奏に関して、何か特別な?

斎藤:『ラ・カンパネラ』は、さきほど言った若い人へのメッセージを込めての演奏ですね。もともとリストだってパガニーニを聴いてスゴイ!と思ってカンパネラを書いてるのに、そんなセンチメンタルな曲であるはずがないですからね。「若いんだからテクニック一本槍とか、 力任せとか言われてもいいじゃない」って感じですか(笑)。『展覧会の絵』はホロヴィッツの得意中の得意の曲だったんです。スクリャービンの『エチュード』はホロヴィッツがいつもアンコールで弾いていた曲ですね。ワーグナー=リストの『イゾルデの愛の死』はホロヴィッツが亡くなる4日前に収録したラストレコーディングの曲なんです。だからホロヴィッツの思い出ということで選びました。そんな想いもあって、このアルバムは正味46分位しかないんですが、聴き終わると1時間半聴いたかなって結構ヘヴィーな感じですよ。

***では最後に、次号から本誌でセミナーを始められるにあたって一言お願いします。

斎藤:ボクは、肩の凝らないといったことを目指していますので、クラシック的なことも含めて、楽しいことが誌面で展開できればと思っています。電子楽器とピアノのそれぞれの良さもありますので、その両方をうまく引き出せたらなと考えています。最初はまず電子楽器の遊び方のようなものから始まって、実際に講師の先や、例えば独学でやられてるような方までお招きして意見を聞いてみたりと、色々今思案中ですので、ぜひお楽しみに、ということですね。

【2】RET'S Pressセミナー 第2回

まずは唐突ですが、電子ピアノを購入する、というのはどんな理由が考えられるでしょう?僕はアコースティックピアノを今まで何回も入れ替えています。というのもピアノには寿命があって、8年も使えばボロボロになってしまうからです。ただしそういう場合と電子楽器を買う時の気持ちというのはちょっと違う感じがするんです。それで、僕なりに電子楽器の購入理由を1〜6まで箇条書きにしてみました。

1:アコースティックピアノは高すぎる。
2:アコースティックピアノは音がガンガン出るので、ご近所迷惑も考えて。
3:2と同じ理由ですが、専門家や音楽大学生なので、夜の練習のために、サブの楽器として。
4:電子楽器をパソコンにつないでいろいろ新たな試みをして、音楽的領域を広げたい。
5:録音機能が付いているので、それを利用して練習などに活用するため。
6:電子ピアノの多彩な機能でいろいろ遊んでみたい。

まあ、こんなところでしょうか。一般的にはどの答えが一番多いのでしょう?どれもありそうなものばかりですよね。ローランドの場合は、4を基本にismという考え方を提唱しているわけです。それは皆さんもよくご存知のことだし、本誌でもよく取り上げていますので、僕は別なことをお話しましょう。

さて、1の理由は切実ですが、それはそれで正当な理由です。室内の場所を取ってしまうという意味からも、やむを得ずコンパクトな電子ピアノを選んだという方もいらっしゃると思います。2も現実的な理由ですよね。日本の住宅事情は、音楽家には特に厳しいものです。僕の周りも、3(2と同じですが)の理由で電子ピアノを購入された方がたくさんいます。実は僕自身もそうでした。1番最初に電子ピアノを買ったのは1980年ぐらいでしたが、マンションに住んでいると、深夜の練習は完璧な防音工事でも施さなければ、不可能に近いですよね。ここは取りあえず電子ピアノで我慢しよう、ということでした。

「我慢」という言葉に代表されるように、特にピアノの専門家にとっては、電子楽器はアコースティックピアノの代用品でしかないといったことが多かったようです。「タッチがグランドピアノに比べてどうだ」とか、「音質が本物のピアノと比べてどうだとか」・・・そんなことがよく言われていました。

昔の機種は、同時に鳴らせる音の数が少なかったので、たとえば、ショパンの「木枯らしのエチュード」なんか、途中で勝手にペダルの効果が切れてしまうように、音が存続できなかったりしたものです。僕が最初に買ったものなどは電子音しか入っていなくて、ピアノの音すら再現できなかったですね。最近では、鍵盤のタッチも微妙に重い軽いを変化させられることができます。サンプリングの音源も豊富になりましたので、生のピアノの音像に近い音色が出される工夫が施されています。

本来ならば、電子音なわけですから、そこに生音のようなニュアンスや暖かさを求めることは難しいのですが、技術の革新により、十分な感情表現ができる楽器になりつつあります。ローランド製の電子オルガンは、この感情を乗せられるという点では特に優れていると思うのです。楽器自体が進歩していますので、アコースティックピアノの代用品として、かなりいい形で応えてくれているわけです。でも代用品として使うだけでは楽器が可哀相な感じがしませんか?

さて、5の理由ですが、なかなか気がきいていますよね。自分の演奏を確かめながら練習ができるっていうのは、効果ありだと思います。プロにとってもありがたい機能で、例えば歌手の人などはぜひこうした機能を持つ楽器を1台は持っていてほしいですね。と言いますのは、いつもピアニストと一緒に練習ができればいいのですが、そうもいきません。大体コンサートでも、2回ぐらいのリハーサルで本番にのぞむのが通例です。そこで、伴奏あわせを行った時に一緒にやった演奏を録音しておけばいいんです。これは便利です。自分専用のカラオケがそれで出来るわけですから、自分が少しルバートでゆっくり歌っても、カラオケのほうがちゃんと対応してくれますから、これはおすすめですね。

ところで、本来は6の理由こそ音楽を楽しむための原点なのです。よく考えてみてください。電子ピアノは本当に遊べる楽器ですよね。サンプリングの豊富なローランド製でいいますと、僕の1番のお気に入りは「ヴォイス」です。その中でもジャズ・スキャットは本当に素晴らしくて楽しいのです。弱く弾いた時と、強く弾いた時では「ウー」とか「ダッ」「ダォ〜」のように4段階で発音が変わっていきます。これをうまく弾きこなすと、そこにマンハッタン・トランスファー顔負けのコーラスなどが展開できます。例えば、タッチが強い、弱い、音が大きい、小さいという観念がなかなか理解できていない子どものレッスンでこの機能を使うと、発音の違いなどにより、具体的に例に示して教えることもでき、教育的にも有意義です。

実は僕が教えている尚美(大学)にもローランドの電子ピアノがあって、このヴォイスを使って演奏を聴かせると学生達は大喜びするんです。それにギターの音がどのメーカーのものよりもリアルで、ボサノバなんかもいい感じです。サックスのアンサンブルもおもしろくて、テナーの“むせび泣き”なども、ヴォイスと同じくタッチの強弱で出せますし、トランペットの哀感のある“ゆらぎ”も非常によく表現できます。僕なんかいったん座ると2時間も遊んでしまうんです(笑)。

こうした遊べるという面を無視する手はありません。また、たくさんのデータのファイルも市販されていますよね。これらはマイナス・ワンでソナチネアルバムも、立派なピアノコンチェルトにしてくれるんです。いやぁ、気持ちいいですよ。さらに効果的な使い方を教えましょう。演奏をピアノの部分も含めて録音して、先生方や自分が、それに合った簡単なオブリガートや副旋律を作って、それと合奏するのです。まだソナチネが弾けない子どもでも、ショパンができない大人でも、素敵なアンサンブルが演奏できます。

電子楽器には電子楽器の良さがあるので、それが活きる形にならないとつまらないですよね。
それではここで楽しいデータをもう1つ紹介しましょう。
そうそう、僕の新しいCD「展覧会の絵」です。よろしくね!

【3】RET'S Pressセミナー 第3回

●実は昨年のローランドのシンポジウムに講師として私が登場したのですが、そこからまた新しい出会いが在りました。その後、私のホームページの掲示板だの質問コーナーに、何人かの方が訪れてくださり、すっかりお友達のようになりました。よろしかったら遊びにいらしてください。
アドレスはhttp://homepage3.nifty.com/masahiroclub/ です。

まず今日ご紹介しますのは、そんなお友達のお一人。府中市でピアノを教えていらっしゃるMさんという方です。Mさんは井口愛子先生の門下、東京音大ピアノ演奏家コース科卒業後、海外でも研鑚を積まれ、さまざまなコンサートの経験を生かしながら、大人から子供まで20人程の生徒を指導していらっしゃいます。PTNA全日本ピアノ指導者協会正会員でパイプオルガンも勉強されたとか・・・これはローランドの講師に是非なっていただかなくては(笑)。シンポジウムは、たまたまインターネットで音楽教育についてのサイトを見ていて、見つけられたそうで、現段階ではレッスン時は電子楽器を使っていないものの、DTMに興味があり、また楽譜製作をパソコンで行いたいので、もろもろ必要性を感じて当日いらしたとのこと。

いろいろMさんとお話していてとても興味深かったことは、「生と電子の違いも気がつかない人が多いのも現実だし、世の中電子音が溢れ過ぎて生楽器の音を知らない、聴かない人もいる事実」という事。音楽的にすべてのジャンルで活躍する電子音の他に、さまざまな生活音、例えば電話の音にはじまって、玄関のチャイム、電車の発車ベル、パチンコの効果音?・・・・ばかりか一見自然の音に思われる朝のホテルの鳥の声にしても何でもかんでも電子音のお世話にならない物はないと言ってよい現代です。やはりクラシック音楽では「生が最高だよ」と言ってしまえばそれまでですが、Mさん曰く「電子音の音楽に慣れている子供が多い中、電子楽器の教育的限界も見極めつつ、音や表現、奏法、内容にこだわらない生徒にとっては、電子楽器の方が音樂を楽しむ範囲が広がる」という事も事実だし、「こんな時代に私達のような末端でピアノを教えている講師は何ができるのか、現代の子供達にとってどのような形のレッスンが望ましいのか、ローランドの先生方にも電子楽器の可能性や生徒達の反応、楽しみ方使い方なども是非聞いてみたいし興味があります」というお気持ちも、ほんとに率直なものだろうと思うのです。

実は先月号で電子楽器を使う単純な理由においての利点をお話いたしました。今回は電子だとここがだめ、生だとここが不便とかいうネガティヴな事は言いたくありません。そのよさを見つけて思いきりトライしようというのが私の主旨です。だからその考えを踏んだ上で、実際にMさんの所の電子ピアノ使用の生徒さんの問題点を上げてもらったのですが


{電子ピアノを使っている生徒の問題点}
                   
1)聴いている音が電子のためタッチと音の微妙な関連付けが確定されない。
2)したがって、耳での音の判断が鈍くなる。特に初歩の段階で子供が使うと後にピアノに買い換えても指の癖などが残る傾向にある。
3)レッスンで生のピアノを弾くと鍵盤が重いと感じるようである。
4)電子は改善されたとはいえタッチの違いは明らかなので、曲が難しくなるに従って筋肉が育っていない為なのか速いパッセージを弾かせるのが困難になる傾向がある。タッチは浅く、音に厚みが出ない等問題が残る。
5)指の為にハノンなどの教材を取り入れても子供の場合、電子でのタッチがインプットされてしまうので、逆効果になる可能性もあると思われる。

ウー、きびしいなあ(笑)。これは多分にメーカーの問題だね。これはより良い機種にすれば改善される。生ピアノの場合だって、アップライトは所詮アップライト。そこでは技術力を磨く事は本当の所は出来ないんですよ。じゃあ、なにかい、何事も金か〜!いやいや、実は実際に普段から子供たち(生徒)に良い音楽を聴かせていればイメージトレーニングは出来ますね。これが大切なんですよ。だってたとえ素晴らしいグランドピアノで練習を開始しても、最初から子供たちが音色の変化を自由にはできませんからね。まずイメージ!でもやはり最初からピアニストを目指す子供には、基本は生ピアノで当たり前でしょう。そしてなかなか音楽が好きになれない子供たちにとっては、より楽しい効果をもたらす電子ピアノこそ救世主のような物ですね。さて上記の事を踏まえてMさんが考える電子楽器の悩めるところ(笑)。すぐレスをつけていきましょう!

Q.生徒が大人であれば具体的に説明して違いを理解してもらう事は可能。生徒のレベルにも左右されるが、ハーフペダルは機種によって違うようなので(私が電子を買ってから気がついたこと)レッスンでどこまで取り入れられるか判断が難しい。また、音の出し方、タッチによる響きの違いをレッスンで聴いてもらって感じてもらう為にどのような工夫をするべきか?

A.おーい、ハーフペダルだってさあ。こういうことはこれからさらに楽器の開発に力を入れていただくしかないでしょう。ただ電子ピアノでも差は出ます。確実に。だから本当は電子楽器は大人の楽器なんですね。そこで一生懸命より心を入れることによって、電子音でも十分に心を溶かすメロディを演奏する事が可能です。またそこでより表現にも工夫が出来ますしね。ローランドを弾くと特に感情移入の可能性を大きく感じる事が出来ます。

Q.タッチの問題をクリアするために指のトレーニングボードなど効果はありますか?

A.友人に子供の頃、指の体操スクールに行っていた人がいますが、後に強靭なテクニックを身に付けたかどうかは疑問でした。速く弾く、強く弾くというのは一般的に技術と捉えられがちですが、もとはイメージです。むしろイメージトレーニングですね。大きな音の出るピアニストや速いパッセージの得意なピアニストたちの演奏を聴いている方が大事でしょう。

Q.音のイメージをつかむために音色を変えてセットして弾かせたりするのは現代っ子達には必要でしょうか?

A.それは単純に楽しい事であるので、イメージトレーニングとしてではなく遊びとしてやる方が効果が在るかと思います。むしろ先生のメニュー作りの腕の見せ所です。

いやあ、みなさま、今回はコアな内容ですね。でもMさんは電子楽器の利点として以下の事をあげていらっしゃいます。

●速度の指定など言いやすい。
●フロッピーが付いた機種であれば連弾の練習に役に立つと思います。
●録音がすぐできるので、自分の演奏をチェックさせやすい。
●アンサンブルが気軽に楽しめるのはいいと思う。(擬似的ですが)
●いつでも弾けるのはやはり利点と言える。

私が今回感じた事はやはり先生方は非常に真面目捉えて教育に向かっていらっしゃるということ、でもそこには色々なタイプの生徒さんがいらっしゃると思うので、是非有力な武器の一つとして前向きに電子楽器を使って頂ければ、更なる効果も生むであろうということです。
Mさんのお教室では毎年、府中の森芸術劇場ウィーンホールにて発表会を行い、普段のレッスンではクラシックのものが中心なので、去年「ジブリの会」を作って、生徒さんが自分達で勝手に連弾で練習してもらって発表するんだそうです。今年は4月に恵比寿のガーデンプレイスで会を行う予定だそうですよ、がんばってくださいね。

そして毎回しつこいですが、私のCD!なんとあちこちで特選盤を戴き、大好評の嵐で有頂天になっています。是非聴いてくださいね!!!よろしく!

【4】RET'S Pressセミナー 第4回

●私がNHKで「お父さんのためのピアノ講座」を担当して以来、アマチュアの方々と思わぬ(笑)親しいお付き合いが生まれました。そして私のコンサートに何回も訪れてくださったり、ホームページのチャットでお話をしたりして、その方々のピアノへの思いや独学の現状を知ることができ、とても興味深く思っているのです。今日はそんな中のお一人、Hさんさんに登場していただきます。

♪♪♪

Hさんは私と同じカーペンターズ世代。お仕事は国内外の森林調査で、人工衛星写真を使って森林の様子等を調べて全世界を飛びまわっています。学生時代はバンド等に在籍していましたが、もともとはニューミュージックやロックなどが好みで、クラシックは嫌いじゃないけど曲と題名は一致しない程度・・・・。ある日奥様から「娘にピアノをやらせたい」と宣言あり。しぶしぶ電子楽器購入のために足を運ぶうち、楽器自体の面白さに魅了され、自分のおもちゃとして購入したのがきっかけで、ピアノを始められました。そして子供とともにバイエルやブルグミュラーを独学するにつれ「練習すると課題が弾ける達成感」と「次に進める」のが楽しくなり、もう病みつき。同好の友人も増え、発表会等にも参加するようになりました。

その後デジタルピアノで録音したデータが、インターネットで一般的なSMF形式のMIDIファイルに変換できるということに気が付いたハリーさんは、フロッピーに入れて会社に持っていき飲み会のBGMにしたり、昔の友人に「近況報告」としてメールに添付して送りつけたり・・・・そして新しく立ち上げたホームページに素材がないので、そのMIDIファイルを載せていった。あくまでも個人的な実験(笑)だったのに、約1年でいろんな人たちが見て意見を交換するような、アマチュアピアノ界では超有名なサイトになっていく。(ハリーさんことHさんのホームページ:「遊び心」http://homepage2.nifty.com/harry3/)

私の方はといえば「お父さんのためのピアノ講座のテキストが難しすぎる」とほざいている掲示板を発見して(笑)、うちのスタッフがそこに書き込みをしたことからご縁が始まります。文句タラタラのハリーさんは、半年でテキストの『ジムノペディ1番』をマスター。「ほーら見ろ、できるじゃないか」とばかり、趣味でやる人こそつまらない練習はスキップして、自分の好きな曲をやるべきだという考えを私は強調!!さらに追い討ちをかけたのです。掲示板に「へえ?ショパンのノクターン好きなんですか?だったら早くやりましょうよ。ブルグミュラーなんかヤメヤメ。来年の夏までには(全曲は無理でも)かなり形になりつつあるのでは?と思うけど?どうですか?やります?」と書きこんでみたのです。当時ブルグミュラーの25番をやろうと思っていたハリーさんのピアノ生活はこれで劇変。「ノクターン2番は、死ぬまでには弾けるようになれれば幸せだなーとか思ってたのよー」と言っていたその曲をもマスターできたのです。

その経過と友人たちの盛り上がりは、ハリーさんや私(http://homepage3.nifty.com/masahiroclub/)のホームページで確認できますが、掲示板やチャットでレッスンをした訳ですよ。というか指示を出したと言う方が正しいかもしれません。そしてハリーさんはすぐ練習状態をMIDIファイルにして貼りつけ、楽譜上の疑問点等はどこかのサーバーに上げて質問する等、現代ならではの楽しくも面白い実験でした。でもこれはデジタルピアノだからできるワザでもありますね。私がハリーさんに授けた練習方法は、まず片手ずつしつこく練習する・・・・その時左手の練習時にはぺダルもいっしょにつける。音楽的な事とその細かいペダリングは、私が校訂したNHK出版の「マイロマンス」という楽譜に、コルトー版なみの注釈をつけたので、ハリーさんにはそれを使ってもらいました。最初こそ思ったより進みがおそかったのですがだんだんペースは加速していきました。この辺の事は本人の口からですね。


{斎藤先生からの宿題 中年3組(笑) ハリー・H}

「3週間で4小節目まで」というのが斎藤先生からの指令だったのですが、結局4小節目までクリアするのに、3ヶ月近くかかってしまったんですね。まず、左手の和音をグワシィッと掴むのが至難の技でして、1日1小節どころか、1日1拍とか2拍掘り進むって感じで、4小節目まで左手の和音を固めるのに3週間かかってるんです。やっとのことで、左手の和音が4小節目まで掘り進んだところで、さぁ右手をあわせて行こうと思ったところ、斎藤先生から「両手はやらない事」「左手+ペダルの練習」「伴奏の2拍目〜3拍目にスラーがかかっているので、3拍目が強くならないように」と指示!で、ペダルがまた難しい。ペダルは、お父さんのピアノ講座の課題曲ジムノペディ1番で練習しただけですから、こんなに細かく踏むヤツは初めてです。練習時間の不足を補うために通勤の電車の中で特訓したり、イメージ・トレーニングしたりしました。練習開始から1ヶ月が経った頃、ようやっと1小節目だけ両手+ペダルの練習を開始する許可を頂きました。地道な練習をしていましたから、両手を許可されますと嬉しくなってついつい進みたくなるのが人情ですよね。で、何の気なしに2小節目、3小節目、4小節目と進んでいたら、1週間後に「当然1小節目はキレイに出来とるんやろな?」と大目玉チェックが入り、3つ戻るぅぅ・・・。また「両手のバランスは右7左3」というアドバイスを戴いて、これがまた難しい。この最初の4小節目に「まる」を頂いたのが、練習を開始して3ヶ月近く経ったころ。譜読みが最後までたどり着くのに1年かかったんですけど、とにかく4小節目までをキレイに仕上げることができたら、あとはCDを良く聴いて(実はこの1年間、私のMP3プレーヤには、斎藤先生のノクターン2番、1曲しか入っていなくて、ずーーとそればかり聴いてた)雰囲気が出るように注意してやれば、初心者でも、なんとかなると思います。逆に言えば、最初の4小節をいい加減にやってしまえば、いくらCD聴いて頑張っても、出来なかったと思うなー。最初の4小節、ほんと苦労したけど、今となったら、もっと時間をかけてやってた方が良かったなーって思うぐらいです。 (おわり)

こうしたHさんみたいな方が最近はどんどん増えているのですね。そしてそこで効果を発揮するのが電子ピアノ。Hさんはその電子ピアノの利点を以下のように上げています。

(1)防音の心配をする必要がない・・・帰りの遅い会社員でも、夜中に練習できます。(はあと)
(2)録音・再生が気軽に出来て、再生スピードを調整できる・・・1小節に満たない練習でも録音して自分で確認して納得行くまでやります。片方の手をゆ〜っくり録音しておいて、再生スピードを上げてもう片方の手の練習をしたり、ゆっくり片方の手を先に録音しておいて、それにあわせてもう片方の手を重ね録音して、  再生スピードを上げて再生して雰囲気をみる。便利です。(号泣)
(3)電子楽器なので、パソコン・インターネットとの親和性がよい・・・(ピース!!)
(4)他の人の演奏データを利用できる・・・データをダウンロードして、パソコンのソフトでその部分だけ切り出してデジピでゆっくり再生させながら、それにあわせて練習。(顔もマジです)
(5)いざとなったら、楽譜をシーケンサーソフトで入力して参考にする・・・どうしてもリズムが取れない、楽譜が読めない、参考にするCDもMIDIもない、どんな曲かさっぱりわからないというときには、シーケンサーソフトで楽譜を打ち込んで、それを電子ピアノでゆっくり再生しながら練習する。(僕って現代人って感じ)
(6)自分の演奏を簡単に人に聴いてもらうことができる・・・電子ピアノでの録音はパソコンで扱えるファイルになりますから、メールで友達に送れるし、ホームページ上に載せることもできる。(えっへん!)

いや、すごい!!!実際に使いこなしているからこその意見ですね。講師のみなさんも読んでるだけで元気になってきたでしょう!!いやいやこれも音楽の魅力ゆえでしょうね。さあ、負けずにがんばりましょうね!!
そう言えばハリーさんは今スカルラッティのソナタを練習中・・・・あ、ぜんぜん聴いてないや、ごめん!

【5】RET'S Pressセミナー 第5回

きょうはちょっと脱線しましょう・・・・・っていつも脱線してるって?まあまあ固い事は言いっこなしですよ。みなさんも興味あるでしょう?RMSのファンタスティックピアノコンクール!!私は審査員席で聴いていました。そのレポートをしてみましょうね!!

さてさて、普通コンクールといえばバッハやエチュードから始まって、最後は大きなソナタ、組曲、性格的な大曲等を課題に選んでそりゃ大変ですわ。もちろん受ける人も大変ですけど審査員だってもう青色吐息です。実は私も3月の半ば、某コンクールの予選で気分が悪くなってしまって、ダウンしてしまいました。延々と続くバッハの平均律、それも10分以上かかる曲の審査は拷問にも似た苦痛でした。何年か前には日本ピアノ界の重鎮S先生もコンクールの審査でお倒れになったと聞きましたし、本当に危険。危うく「さらばっはーー」となってしまう所でした(笑)。やっぱり同じ曲を1日に50人も淡々と聴くのは、神経的にはかなり参りますが、実際に受けてる方はもっと大変。きっと舞台に出て倒れそうになっているはずです。緊張と期待と不安で本当にお気の毒。普通はお客さんも参加者がチラホラいるだけで、大きなホールにグタっとした審査員の一群・・・・これじゃビビリまくりますよね。RMSファンタスティックピアノコンクールでまず驚いたのは、その観客の多い事多い事!!シビックホールの大ホールといえばかなりでっかいはずなのに、人気アーティストのコンサートを上回る盛況ぶりです。審査委員長の前田憲男さんが審査員室の方に行こうとしたら、「あ、あそこが最後尾ですから並んでください」と受付にいわれてしまったらしいです(爆笑)。前田さんと言えば日本ジャズシーン(だけではありませんが)の大巨頭。そんな審査員の顔ぶれが、また実にバランスがよい。クラシック現代音楽の巨匠の北爪道夫さんは私の恩師でもあります。高校時代「北爪流独断カリキュラム」でギュウギュウしぼられ辟易しました(うそでーす)。超有名なプレーヤの田代さんとは初対面。そして葉加瀬太郎さんがいるんですから!審査員室自体も普通のコンクールとは大違いの楽しさです。

さて聴く前までは若干の偏見があった事を正直に告白します。前にもアマチュアのためのコンクールでポピュラー曲を弾いても良いものがあったんですが、まあ何というのでしょうか、退廃の極致とも言うべき手抜きのアレンジで、精気のない演奏が繰り広げられ、うんざりした経験があるのです。やはりポピュラーものは審査員としても判断の基準というものが抽象的な好みみたいなものと密接でしょうし、PA(マイク)が使われていれば精妙なタッチや力感等は正確にはわかりにくくなってしまいます。ところが今回のコンクールはなんと楽しくステキな事か!ほんとに驚きました。まずアレンジが楽しいですね。往年の映画「愛情物語」のカーメン・キャバレロの華麗なピアノを思い出しました。参加者の演奏もすべて真剣で本格的なもので、曖昧さが何ものこされていない素晴らしいものばかりでした。中にはジャズっぽいアドリブソロで、自分のオリジナリティを発揮された方もいて、そういう方には必然的に高い得点が集まります。クラシックのレパートリーでないとなかなか内容が伝えられず、表面的なうわっついたものになりがちだと考える人は、是非このコンクールを御覧なさい。ここではむしろ演奏者の思いがダイレクトに伝わり、ピアノを弾く1つの理想的な楽しい姿を味わうことができます。だからこれだけ多くのお客さんも集まるのですし、もし私に子供がいたら参加させたいと思うくらい夢がある企画でした。

葉加瀬さんは審査判断の基準について「演奏者からのギフトがあるかないかだよねえ」と言っておられましたが、それは正しいと思いますね。クラシックのコンクールの場合、そうは言っても暗譜を忘れちゃったら大減点ですよね。でもポピュラーならもっと表現したい事がいっぱいあるはず。審査席がまた彼の隣だったのですが、いっしょにスキャットをしたり、パーカッション風にリズムを叩いたりでノリノリで聴かれてましたね。「クラシック畑の人は、難しい所が来るとテンポが速くなるんだよね」・・・・もともとはクラシック出身だから言える一言も。たしかにクラシックのヴィルトゥオーゾのスタイルで演奏しようと思ったら、速いパッセージはより速く、歌うところはより歌った方が聴きばえがします。そういえばむかしNHK「サタデーホットリクエスト」に出た時、シンガーソングライターの司会者が私たちの室内楽を聴いて「どうして全員が違うテンポでそれも揺れながらやってるのに、合っちゃうんですか?」と本当に不思議そうに言っていました。クラシックの世界だとそれが当たり前というか、本人たちはきわめて厳密なテンポで弾いているつもりですが、実はクラシックが一番自由奔放な呼吸で演奏しているのです。

さてさて今回のコンクールはバックにストリングスやシンセサイザーがナマで共演。その雰囲気もとても豪華でステキ。また指揮者やコンサートマスターは友人だったので、それもうれしかったです。今回みたいにメチャウマな人ばかりでなく、もう少しいろんな方が楽しく参加できても良いかなと、電子ピアノ部門の設立を社長によくお願いしておきました。ささ、来年みなさんもこぞって参加しましょうね!!

【6】RET'S Pressセミナー 第6回

さあ、この連載も最終回になりました。今回の連載は色々な人に取材をして私自身も考えさせられることも多く刺激的でした。さて今回はお二人、TさんとAさんにご登場いただきます。

Tさんは関西在住、40歳前にVTMのA講師資格取得、つまり子供の頃ちょこっとピアノをやって、大学時代はサークルで演奏、コーラスやウクレレバンドで活動なさったりしていますが、正式に音楽の勉強をした訳ではないということです。「ピアノが好きというだけで、人に教えることができるのか?」と、いつも自問自答なさっていましたが、講師養成科で「教えたいと言う気持があれば十分。音大出たての若い先生には子供を育てた経験もないし。お母さん先生と言う経験がモノをいうことも色々あるでしょう。」と、勇気付けられたそうです。

確かにクラシックは伝統芸術なので、専門教育を受けずに教えるのはかなり難しい・・・・のです。でも教えるのはただ王道を説くだけではだめでしょう。教えると言うのは人間関係ですので、いろんな先生がいることで、初心者や挫折した心を救えることが出来るという事もあります。Tさんからの質問に「練習してこない子がいるけれど、どうしたらいいだろうか?」というのがありましたが、わたしなら3分ぐらい聞いて「君、練習してこないなら、二度と顔を見せなくていいんだけど。」ということになるかも。きゃー!私自身、子供の頃から非常に厳しいレッスンをされ、毎回例えばワンフレーズの崩れだけなのに、もう人間として生きてる価値がないくらいに、先生からののしられたりしました。でも続けられたのはやる気があったからで、それが当たり前な時代でもあったので、やる気がないのにレッスンにくるという感覚自体が想像できないし、理解できないのです。でも先生がいっしょに歩んでくれるような人なら、多くの子供たちが音楽をきらいにならなくて済む訳ですね。

TさんがKR−577を購入した理由の一番は夜中でも思いっきり弾けること。とっても音がいいので思う存分弾いておられるそうです。また「曲によって違う楽器の音色を経験させたい。すごく曲の雰囲気も変るし発想が豊かになると思う」とおっしゃっています。「自分の時間を割いて音楽に触れる生徒さんがぐっと減りましたよね。と言うことは最新の情報を持って音楽教室の質を上げないといけないのではないでしょうか。」・・・このあたりで電子楽器の出番がまた増えそうですね。

さてさてAさんは仙台生まれ、5歳からピアノをはじめ高校も音楽科に進み、大学は国立で学ばれました。幼少より沢山の先生に師事したせいか「音楽の先生になって、音楽の楽しさを伝えたい!」と感じていたので「どうしたら分かりやすく、楽しくレッスンができるのか」・・・・音大に通いつつヴォーカル(ポップス、ロック)、ポピュラーピアノ、エレキギター、DTMなどなど、どんどん領域を広げたのです。音楽教室でヴォーカルを教えていた時に、ローランドのデジタルピアノに出会い、デジピの面白さをもっと幅広く活用したいと思ったそうです。そして子供のピアノ教育や音楽療法などに積極的に取り入れられるはずだと。そんな時ローランドが提唱する「ism 」教育の存在を知り、RET'S会員となりシンポジウムに参加したら、私と会ってしまったわけですわい(笑)。ですからみなさんには身近な先生のお一人という事になりますね。

Aさんはデジタルピアノにパソコンをつないでミュージックデータを流したりする時、デジピでいろんな音色がでるのにたいして、実際にどんな楽器でどうやって演奏しているのか?というのをパソコンで見れたり、ベートーヴェンやショパンといった作曲家の肖像をみながら、音楽の歴史の勉強やその他楽典、聴音などをゲーム感覚で勉強できる音楽ソフトなどあればなぁ・・・と思ってるそうです。そう言った事もデジピなら可能だし、子供の夢も広げられますよね。それに対して、デジタルピアノが多く普及してきているのに、まだまだネットなどの「ピアノレッスン掲示板」などをのぞいてみると、偏見?が多いのも事実と・・・・私は「電子楽器と生ピアノは同じ楽器と思ってはいけない」とここでもずっと主張しています。それぞれがどちらの代用品でもないのです。その発想が出来ない限り、楽器の利点を見つけて楽しむことは永遠にできませんよね。

Aさんのレッスンでは実際、デジピの見た目から「ボタンが沢山あって面白そう、触ってみたい、何をするものか先生に聞いてみたい」ということで、生徒とのコミュニケーションも増えているという事です。実際にミュージックデータを使えば、生徒の好きそうな曲をかっこよく演奏できるし、生徒が練習しなかった場合でも、その場で出きる練習がデジピの機能を使うといくらでも楽しくできるそうですよ。「よく使うのは、フィンガートレーニングを色々なリズム(サンバ、ロック、ワルツ)で軽快に練習!私もノリノリでリズムに合わせて「ワン、ツー、スリー、フォー」となぜか英語で拍子をとってみたり、メトロノーム機能の「ワン、にゃ〜」音色を使うと、幼児なんかも大喜び!また{繰り返し練習機能}を使うと、繰り返し練習するのが苦手な子も、自動伴奏と上手く合わせて使うと、自分が弾く小節にくるとすかさず弾き始めるんですね〜」・・・・・すご、活用してるじゃん!!また私も賛成ですが、歌の伴奏用として自分のピアノ伴奏をあらかじめ録音したりする事は、専門家にもお薦めですよね。「とにかくピアノを初めて習う生徒がほとんどなので、上達させることはもちろんですが、とにかく飽きさせない、楽しくをモットーにレッスンを考えています。生徒さんはほんの些細なことが楽しかったり関心したり、興味をもったりなんですね〜」・・・・ほんとそうですね。まさに現場の声です。
AさんのHPはhttp://www.ne.jp/asahi/music/life/です。

皆さんも、またいろいろ試行錯誤なさる事も多いと思いますがしながら、実は周りにいっぱいお仲間がいらっしゃるという事を思い出してくださいね。そんなネットワークもこういう楽器とのかかわりを通じて生み出して行くのも、大切な事だと思いました。半年間ありがとねーー!またお会いしましょう!!


*取材協力の方のお名前はネット検索にかからないようにイニシャルに変えさせていただきました。
注:Hさんはハリーさん、Mさんはお蝶さん、Tさんはさくらこさん、Aさんはショコラさんす。