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モーストリークラシック「ピアノ虎の穴」タイトル

「ピアノ虎の穴」カリキュラム

■虎の穴特別講座■ What's Piano


「ピアノ虎の穴」カリキュラム

斎藤雅広の「ピアノ虎の穴」は、2000年7月号〜2001年6月号まで、
産経新聞社発行の月刊「モーストリー・クラシック」で好評連載されました!!

第1回 まずさわってみよう! 虎の巻(その1):鍵盤の位置と楽譜の読み方、指番号
レッスン1:ド・レ・ミ・ファ・ソを弾こう
レッスン2:指の鍛錬
レッスン3:和音を出してみる
予告:「聖者の行進」
2000年7月号
第2回 「聖者の行進」にトライしよう! 虎の巻(その2):大譜表、拍子、音符と休符の長さ、表情記号
レッスン4:「聖者の行進」を図解入りで
レッスン5:「聖者の行進」のメロディを両手のユニゾンで
レッスン6:「聖者の行進」のメロディを右手と左手のカノンで
気になる、これなぁに?(その1):ペダル
応用:斎藤雅広スペシャルアレンジ「聖者の行進」白鍵ヴァージョン
2000年8月号
第3回 「聖者の行進」にトライしよう! そのA レッスン7:和音をつかむ練習〜「聖者の行進」をアルペジオ(分散和音)の伴奏で
レッスン8:「聖者の行進」をアルベルティバス(ドソミソ・・・)の伴奏で
虎の巻(その3):黒鍵について(シャープ♯とフラット♭)
レッスン9:黒鍵に慣れる〜半音階の練習
まとめ:臨時記号の決まりについて
2000年9月号
第4回 「聖者の行進」にトライしよう! そのB レッスン10:臨時記号と調号(調子について)
虎の巻(その4):長調と短調
レッスン11:#5つのロ長調で「聖者の行進」を弾く
レッスン12:度重なる転調の中で「聖者の行進」を弾く
気になる、これなぁに?どうするの?(その2):黒鍵のタッチの位置
まとめ:イメージを大切に・・・
次回の「ムーン・リバー」の予習とペダル記号
2000年10月号
第5回 「ムーン・リヴァー」をムーディーに その@ レッスン13:テクニック的な3つのポイント
ポイント@指番号とは
ポイントA指のくぐしかた
ポイントBペダルの使いかた
気になる、これなぁに?どうするの?(その3):「ペダルが濁る」・・・って何?
レッスン14:音楽的なポイント
ポイント@同じパターンの繰り返し
ポイントAスラーの読み方
ポイントBハーモニーの色合い
2000年11月号
第6回 「ムーン・リヴァー」をムーディーに そのA レッスン15:前奏のイメージ、主題への入りかた、テンポ運び
レッスン16:重音、指くぐり、シンコペーション、和音
レッスン17:右手の指のトレーニング
特別大付録:「My Romance」特別ヴァージョン
2000年12月号


    ピアノ虎の穴 第2回            ピアノ虎の穴 最終回

第7回 「ムーン・リヴァー」をムーディーに そのB レッスン18:旋律の歌わせ方の定形
レッスン19:技術的な練習
レッスン20:内声の動き
2001年1月号
第8回 「ムーン・リヴァー」をムーディーに そのC レッスン21:まとめ
虎の巻(その5):クライマックスをつくろう!
レッスン22:PPの出し方
レッスン23:イメージを感じて
2001年2月号
第9回 「ムーン・リヴァー」をムーディーに そのD ホワイトデー緊急特別企画:「雨だれ」をプレゼントしよう!
レッスン24:アルペッジョの弾き方
レッスン25:イメージのヒント
レッスン26:ラストに向かっての大切な部分
2001年3月号
第10回 「ムーン・リヴァー」をムーディーに そのE レッスン27:展開部と経過部の弾き方
虎の巻(その6):ソナタ形式ってなんやねん?
レッスン28:テクニックの説明
レッスン29:盛り上げてからコーダへ
2001年4月号
第11回 「ムーン・リヴァー」をムーディーに そのF レッスン30:マンシーニ「酒とバラの日々」
レッスン31:まとめ
レッスン32:コーダ(終結部)の弾き方
2001年5月号
最終回 「ムーン・リヴァー」をムーディーに そのG レッスン33:まとめ」
レッスン34:基礎トレーニングの復習
おしまいに:「ムーンリヴァー」全曲
2001年6月号
*この連載の課題曲「ムーン・リヴァー」は斎藤雅広のセカンドソロアルバム「アラウンド・ザ・ワールド」に収録されています。



特別講座■ What's Piano

月刊「モーストリー・クラシック」(2002年2月号)

さて、さ〜て、ピアノの世界へようこそ!
数ある楽器の中でも特別に大きく、威厳のあるピアノの秘密を探ってみましょう。
大作曲家たちがこぞって技を競い、楽想を練ったピアノは楽器の王様とも、小さなオーケストラとも例えられます。
さささ、どうぞ魅惑の世界をとくとご覧あれ!

ピアノの誕生
現在のような姿や仕組みを取り入れてピアノという楽器が生まれたのは、今からおよそ三百年から二百五十年ほど前のこと。イタリアの大貴族、メディチ家の楽器係をしていたバルトロメオ・クリストフォリという男が、鍵盤を叩く力の加減で弱い音も強い音も自由自在に出るような楽器を開発したのが始まりといわれています。
彼以前や同時期にも、一定の音量の幅でしか強弱が表現できなかったチェンバロなどとは違った楽器の開発・発明は模索されていましたが、鍵盤を押すとハンマーが弦を叩き、その叩き加減で音の強弱や表情が微妙に表現できるクリストフォリのアイデアは抜群でした。その楽器はピアノでもフォルテでも出せるから、「ピアノフォルテ」と名づけられました。何とも安直な名前ですが、これがあっという間に作曲家や演奏家に受け入れられました。発明当初や改良の時代は、ハイドンやモーツァルトが活躍し、ベートーヴェンが大作を山のように書きつづけ、さらにはショパンやリストという大ピアニストがピアノという楽器の可能性を大きく開拓していた頃で、多くの人の手を経て改良が進められ、現在のような隆盛を迎えました。リハーサル中の斎藤雅広


打楽器なのだ
ピアノの演奏で一番難しいことは、レガートに音をつなげて弾くこと。なにせピアノは、鍵盤につながったハンマーが弦を叩いて音を出すという原理的には「打楽器」だから。弦の響きは、鳴った瞬間から徐々に消えていきますから、歌うことはとても難しい。同じレガートでもクラシックとジャズでは違いがある。それはオペラ歌手のベルカントとポピュラー歌手の歌い方が違うようなもので、音をつなげるために細心の注意を払い、色々なテクニックを使っています。
まず第一は、音が滑らかにつながるように指使いを工夫すること。ある音から次の音へと移動するのに機能的な指使いは確かにあるのですが、指を変えたからといってメカとしての動きは一緒。色んな人が色んなことをいっているけど、実はみ〜んな気持ちの問題だったのだ。音をつなげるもう一つの方法としてペダルを使うというのがありますが、もしもペダルが超人的に上手ければ、一本指で弾いたって音はつながるはず。そんなことについ最近気がついて、ニュートン以来の大発見をした気分なのじゃ。
ペダルを使う、使わないもピアニストの趣味、好みの問題。どちらがいいとはいえません。そこには聴き手の好みも加わってさらに問題は複雑になるようです。ソロの時はともかく、伴奏をする時には大変。相手方のソロの存在を立ててやろうと不本意ながらペダルを多用して、わざとぽやけた音を出すことがありますが、そんな時には、「伴奏のピアノはペダルが多くて…」と容赦のない批判が飛んできて困ったものです。

なぜか、横向き
ピアノ以外の楽器では演奏者は客席の正面を向いて演奏していますが、ピアニストだけはなぜか横向きです。今はごく普通のことでピアニストは何も不思議に思ってはいないのですが、バロック時代のオーケストラの演奏などでは、チェンバロ奏者が真正面や真後ろを向いて演奏していました。これを変えたのが教則本でよく使うソナチネ・アルバムで有名なヤン・ラディスラフ・ドゥシェック。彼は鼻が高く横顔に自信を持っていて、これを何とかしたいと楽器を横向きにして演奏してみたところ、なかなかいい音がしたということで現在に至っているそうです。

暗譜は大変だ
ピアニストにとって試練の一つに暗譜があります。両手で別々の音を出すピアノは覚えるべき音も多くて大変です。これもまた一人の歴史的な演奏家によって始められるようになりました。かつてピアノ演奏といえば作曲家が自作を即興で演奏するのが主流でしたが、そこにクララ・シューマン、いやその頃は結婚前でクララ・ヴィークかな。彼女が専業ピアニストとして存在を示したわけです。彼女は誰のどんな難曲でも暗譜で通し、それ以来、ピアニストは暗譜すべし、となった次第です。憎きはクララめ!
そうはいっても暗譜をすべきか否かはピアニスト自身の問題。晩年のスヴャストラフ・リヒテルが暗譜をやめて作品を深く掘り下げていったように、暗譜のために使う時間で多くの作品を仕上げていくという方法もあるでしょう。暗譜はやろうと思わなければ決してできないもの。楽譜を見たその瞬間にすべてを暗譜したといわれているワルター・ギーゼキングに今からでも会って確かめたいくらい。それから自分自身でアレンジしたものは、大まかな雰囲気だけを掴んでいるだけでなかなか覚えられない。ピアノ講座の模範演奏なんかもう大変なんです。

タツチか音色か
ピアノを選ぶときに重要なファクターは、タッチか音色かのどちらを取るかということ。鍵盤を叩いた感じがぴったりするのを選び、音色や音量は楽器の個性として捉え、その中から自分なりにコントロールして音をつくっていくのがタッチ派。一方、絶対にこの音でなくてはならないというのが音色派。タッチ派は、音が多少沈もうが、キャンキャンしようが、制御しやすいのを選び、音色派は音の個性を大切にして楽器の機能は二の次に考えます。

調律師との相性
どのピアニストにしても大切なのは調律師とのコンビネーション。調律師は楽器の最良の状態を作り出してピアニストに渡してくれますが、ピアニストがどんな楽器を好んでいるかを知ってくれているかどうかが問題。
アルフレード・ブレンデルは事細かにピアノに白墨で注意書きを書き、ぴったりそのままに収まったピアノを求めているそうですが、タッチ派の僕は、ギリギリに調整して寸分の狂いもないピアノより、ある程度遊びがあり、音の出る暴れた楽器が好き。ステージに出ている時のピアノの車輪の向きさえ指定する演奏家もいて、調律師の仕事は大変でしょうが、音が狂ってこないことは最低限求められることでしょう。狂った音をお客さんに聴かせるのは本当にしのぴないことです。

レコーディング中の斎藤雅広
個性が楽器に反映
ピアニストの個性や演奏のスタイルは、その人が弾いたピアノの状態が雄弁に物語るのは当然のこと。僕が選定した楽器はなぜか評判が良くて、ウラディーミル・アシュケナージもお気に入り。それを自慢したいところですが、同じ楽器を弾いたとたん、「このピアノ、私を拒否してる!!」なんて叫んでいる有名女性ピアニストもいて、人それぞれにピアノに求めるものが違うようです。
リヒテルのピアノは彼の強靭なタッチの通りに、鍵盤の動きがすごく重くて、音の出ない楽器。こんなので、よく演奏するなというほどだ。マルタ・アルゲリッチのもこれまた、全く音の出ない楽器。奔放なまでの演奏をする彼女らしいピアノで、乱暴とさえ思えるタッチに耐えて微妙な色合いが引き出されるようで、他の誰も弾きこなすことが難しい楽器です。


ピアニストは闘う
僕はピアノという楽器を始めたときから、この楽器にしかないきらぴやかなイメージを抱き、そのイメージが人に伝えられるような演奏をめざしてきました。ピアノは他の楽器よりも音が多く、表現の幅も広くて色彩も豊かです。どのピアニストも、ピアノに向かい、そのメカニックを駆使して、メカニックを超えた音楽を求めているものです。
ピアニストは楽器を携えて演奏会場に出かけることはほとんど不可能で、ホールにあるピアノに初対面をして、その夜の演奏会に臨みます。良いピアノで良いホールに出会ったときなど、自信を深め、意欲も高まるのですが、その逆の目に遭ったときは本当に悲惨。どうやったって上手くいかなくて、一昨年ある会場で演奏した後など、「もう引退しよう!」なんてくらいに打ちのめされることもありました。
ピアニストは皆、今夜出会うピアノがどんなのものなのかに思いを巡らせながら、旅を続けているわけです。どんな楽器に出会おうとも、自分の演奏を待っていてくれるお客さんがいる限り逃げ出すわけにはいきません。ピアニストは今日もまた、どこかの街で自分自身と闘っているのです。




月刊「モーストリー・クラシック」は産経新聞社から毎月10日に発売されています。
購入しそびれた方は是非バックナンバーをお取り寄せください。
税込定価300円(2001年現在)
産経新聞社(Tel:03-3231-7111/大代表)

取り扱い店一覧等は「モーストリー・クラシック」のHPでご確認いただけます。
http://www.sankei.co.jp/mostly
モーストリー・クラシック